2023年7月、株式会社Respawnは和歌山県に2つのオフィスを開設しました。
東京のWeb制作会社であるRespawnが、なぜ和歌山に進出を決めたのか?
現地での課題やミッション、これからのRespawnが目指していくエンジニアのライフビジョンについて、Respawnの中核を担うプランナー、岩部 駿さんにお話を伺いました。
コロナ禍を経て、再び立ち上がった地方進出
ー この度、Respawnは和歌山県内に2拠点を構えることとなりました。
地方進出の構想というのはいつ頃からあったんでしょうか?
構想自体は2019年以前、コロナが流行する前からありました。
IT業界における人材不足は当時からの課題で、転職するために地方から沢山の人材が上京してきていました。
Respawnは人材教育に自信を持っていましたので、IT業界に求められる人材とは?をテーマにエンジニアを増員していく中で、上京するという決断に至らない人材でIT業界に興味を持っている潜在層に着目し、東北から地方進出の構想を練っていました。
視察の段取りを設定して、いざ決裁というタイミングでコロナが流行してしまったんですね。それから数ヶ月してIT業界にも余波が拡大し、エンジニアの待機も増え、地方進出どころではなくなってしまったんです。
コロナがある程度収束し、改めて地方進出を検討したのは2021年。
BCPの観点からも東北からではなく、長野県を視野に情報収集をして視察の段取りを進めました。
そんな中、和歌山県から連絡を頂き、同時進行で話が進み、結果、先に和歌山オフィスが誕生しました。
ー 2021年からの再始動から2年。元々長野進出を想定していた中で、和歌山進出がスピーディに進んだきっかけというか、初の地方進出を和歌山に決めた理由はなにかあったんでしょうか?
長野を飛び越えて、先に和歌山に進出しちゃったっていう……(笑)
和歌山県への進出の決め手になったのは、第一に人の温かさ。県庁のひとたちのフットワークの軽さと熱量。地元企業さんたちの勢いにすごい影響されましたよね。
次にRespawnメンバーが趣味でやりたい事が和歌山には全部揃っている点です。
何よりも、視察や現地の方とのコミュニケーションを経て生まれた ”この環境が好きだ ” という気持ちを優先しての決断でした。
まだまだ可能性を秘める和歌山は、” Respawnっぽい ”
ー ” 関西に進出するのに大阪だと大きすぎるから、ちょっとずらして和歌山…… ”みたいな流れなのかな、と勝手に想像していましたが、最初から和歌山を想定していたんですね。
そういう意味でいうなら、主要都市に出すのは「Respawn」っぽくないんですよね。
Respawnのベースになっているのは教育という観点なので、進出先がどれだけ栄えていて仕事があるかではなく、より人や地域に根付くという活動を醸成出来るか、という事に重点を置いています。
かなり非効率であることは理解していますが、それがRespawnという企業の組織文化になっています。
ー 和歌山では、白浜ベースと和歌山ベース、2つの拠点を構えました。
物理的な距離としてもかなり離れていますが、それぞれどのような役割を担うのでしょうか?
和歌山市内のオフィス(和歌山ベース)は現在の駒沢本社と同じような、教育を中心としたSES事業をドメインとして活動していきます。
そして白浜町オフィス(白浜ベース)は、東京のメンバーも活用出来るワーケーションラボとしてWEB制作や地域交流の場として利用する想定です。
可能な限り、リモートワークでワーケーションに行けるメンバーにはぜひ一度白浜に行ってほしいと思っています。海鮮は美味しいし、海はきれいだし自然に囲まれてるし。適度に観光もして、遊んで、”和歌山っていいところだな”って思ってもらいたい。
そして、一度だけじゃなくて、定期的に行ってリフレッシュするっていう習慣をつけてほしい。自然と触れ合うことの大事さとか、都会では感じられない現地のひととの触れ合いとか、そういうものをそれぞれ体感してほしいと思っています。
ー 自然の中でインスピレーションも湧くというところもありそうですね!
そうですね。凝り固まらないというか、自由で開放的な空間で、よりクリエイティブな環境でのびのびと仕事できたらいいなと考えてます。
地方のIT人材を ”発掘して、育てる”
ー 実際に和歌山での操業が始まりました。近々での現地での目標、ミッションのようなものはあるんでしょうか?
まずは、現地での潜在的IT人材の発掘ですね。
企業誘致で和歌山に拠点を出すIT企業の多くは、和歌山の大学とか専門学校を卒業する新しいIT人材を雇用することを想定しています。
しかし、Respawnが目指すのはそこではなく、和歌山県内にいながら働き方を選択出来るIT人材の育成を目的にしています。
ITエンジニアになりたいって東京に出ていくんじゃなくて、和歌山にいながら、きちんとITエンジニアになれる知識と経験を積んだ上で、東京の案件も請け負えるようになってほしい。
仕事のために上京、移住するのではなく、働きたい場所で最高のパフォーマンスを発揮できるフリーアドレス思考の人材を育成することを目指しています。
ー 実際、地方でエンジニアを目指そうと思う人口というか、そもそも就職口っていうのはあるものなんでしょうか?
IT系、Web系の仕事は主要都市に比べたら、全然ないというのが現状です。やりたいと思っても仕事もないし会社もないから、IT業界を目指す人は高校・大学の時点で大阪の学校に通い、そしてそのまま大阪の会社に入ったり、東京に上京しています。
なので、まずは地元で働ける選択肢を仕組み化するところからですね。
そのためにも、IT人材を育成し和歌山県内のエンジニアをたくさん創出していくことがファーストミッションだと考えています。
リモートワークを実現する鍵は、”カルチャーとコミュニケーションの一致”
ー 和歌山での基本業態は東京と変わらずSESで、現地でエンジニアを育成し、開発現場に送り出していくことになると思います。
しかし、先程のお話でもあったように、実際地方にはまだ開発の案件自体がない、というお話でした。
そうですね。しばらくは東京、もしくは大阪のフルリモートの案件を取ることになると思います。
ー コロナもだんだんと収束し、都市圏でもフルリモート案件は減り始めているのかなと思うのですが、そのあたりの懸念はありますか?
コロナ以前はそもそもリモートワークは殆どありませんでした。現在がむしろ沢山の企業がリモート環境を維持する為に努力してくれているという印象です。
リモートでもチームの期待に応えるために必要な事、それはプロジェクトチームとのカルチャー、コミュニケーションが一致していることです。
もちろん、出社してプロジェクトメンバーと直接コミュニケーションを取ることは必要だと思いますし、エンジニア自身の開発スキルが備わっていること前提ですが、プロジェクトに馴染んでいく過程でリモートに切り替えていくことは、決して難しいことでは無いと考えています。
大切なのは、自らの価値のために学び続けること
ー 今回の和歌山進出を受けて、現在都心にいるエンジニアから”フルリモート案件をこなしながらゆくゆくは地方に移住したい”、”実家に戻って家業も手伝いたい” といった声をちらほら聞くようになりました。
弊社の教育部門のリーダーは ”リモートワークをとりつづけるためには必要なのはスキル・技術。そのために勉強し続けてください” って常に言っているんです。
勉強って、別に会社のためにしろっていうんじゃないんです。
自分の自由な時間・場所を確保したり、自由な生き方をするために、リモートワークを続けられるだけの技術を、自分の価値を磨き続けてほしいんです。
ー 技術があれば、場所を問わずに仕事は続けられると。
そうです。東京の開発案件を、地方にいながら請け負う一方で、そこから地域に根付いたITの在り方を創出していくことは十分に可能なんじゃないかなと思っています。
ゆくゆくは47都道府県に学舎をつくって、そこでIT人材を創出していく。
新しいIT人材の発掘、教育をして、コミュニティを醸成していく。各地方拠点のメンバーは地元で稼いでもいいし、東京の案件をとってもいい。
これが実現できれば、常時東京にいる必要はなくなります。
あくまで東京は仕事がある場所で、住む場所はそれぞれでいいんじゃないかなって考えてるんです。
地元で、空いた時間を使って実家の家業を継いだり手伝ったりすることもできるかもしれない。いいとこだらけだなと。
農業✕IT、これからのRespawnのエンジニアが意識していくべきこと
ー 今回の和歌山以外にも、地方への進出はどんどん広げていく構想なんですね。
そうですね。元々お話をしていた長野は今も定期的に現地視察に行っていて、前向きに進んでいます!
ー 長野では視察だけでなく、現地の農家さんのお手伝いなんかもしていると伺いました。これも今後のRespawnの事業に関わってくるのでしょうか?
長野も和歌山も、農業系のコラボレーションというか、協業みたいなところは拡大していきたいと思っています。
今は長野は農業が先、和歌山はITビジネスが先って感じで動くことになっていますが、和歌山でも今後、農家さんとの繋がりを創っていくっていうのも一つのミッションです。
ー いわゆる『半農半X』と呼ばれるビジョンですね。
今すぐ具体的にどこでなにする、始めるってわけじゃなくて。
まずは自分たち自身で、衣食住とデジタルライフをかけあわせて生きていくって構想自体を、きちんと意識しておかないといけないと考えているんです。
そのためには、まず農業や地方を知るために具体的な場所・要素が不可欠なわけですね。
エンジニアの仕事でお金を稼ぎながら、一方で地域の方や農家さんをお手伝いをすることで衣食住を自分で賄っていく。
こういう体制をつくっていきたいっていうのは、もうずっと提唱し続けています。